オペラを観に

ザールラント州立劇場へ行きました。ドイツ人作曲家サラ・ネムツォフ(1980-)作曲の「オフェーリア」。新曲で今日が世界初演です。複数の劇場関係者から色々と話は聞いていました。とにかく曲が難しいと。というのはメロディーがなく、意味がないような音の連続で、その上、楽譜もそれぞれの音が1/4音や3/4音高くといった指示があり、あまり音楽的ではない音楽です。難しい曲の場合、普通は1年以上前から練習が始まります。別の劇場では、過去の作品で作曲家自身が「実現不可能だと思う」という作品の場合、3年前から練習を始めたと聞きました。現代曲の場合、そういった時間が必要です。しかし今回の「オフェーリア」は昨年末に出来た曲で、時間が足りません。

聞けば演出もしっかりとしたアイデアがあるわけではなく、何度も変更になったということ。実現できるか分からないので、劇場側と作曲者が何度か話し合いの場を設けたということで、公演実現のために色々と工夫がなされたということです。

というわけで、友人と一緒に観に行きました。オペラはどの演目でもプレミエ公演は完売、ほぼ完売になることが多いですが、今回の曲は現代曲で馴染みがないからか空席がありました。オペラの内容はシェークスピアのハムレットに基づいたものですが、オフェーリアが4人いるなど、複雑なものになっています。劇場では開演時間前より早くにスピーカーから何やら騒音、雑音のようなものがなっています。

照明が消えて演奏が始まりましたが、その雑音、騒音は聞こえたままです。演奏も音楽というより音が適当になっているだけにも聞こえます。この演目は休憩なしで2時間以上あります。この音を2時間も聞かせられるのか!と思った人がいるのか、途中で帰る人もいました。休憩なしというのは、客を帰らせないために取った処置かもしれません。

歌手や合唱、オーケストラの演奏が難しいと聞いていましたが、雑音、騒音、効果音でその難しさは感じられませんでした。舞台は上下に動いたり、回ったり、映像を使ったりと凝っていますが、全体的に暗く、逆に2度ほど照明が非常に眩しくて舞台が見られないなど、最後まで飽きない演出になっていました。音楽は好みではないですが、最後まで眠くならない作品でした。

この曲を聴いて、楽器や音階がない古代の儀式はこのようなものだったのかもしれないと感じました。メロディーがなく音楽的ではなく、ただ音が出るものを鳴らし、声を出すといった感じです。公演後のカーテンコールはそれほど盛り上がることなく終わりました。しかしいずれにしても、こういった音楽、オペラがあると知れたのは個人的には良い経験で、この作品を世界初演で観られたのは価値あることだと感じました。演奏者の皆さんもお疲れ様です。公演後にカフェでビールを飲みましたが、喉が渇いていたこともあって冷えたビールが非常に美味しく感じられました。